1,徳政令、相対済令、棄捐令という、似たような言葉を使って「定期試験問題と入試問題は、どこが違うのか」を説明します。

「 社会は言葉さえ覚えていれば、点数は取れる」
「社会なんて暗記だけや!」
と考えてる人がいます。

確かに社会は覚えることが多いです。
しかし

暗記だけで高校に合格できるほど、社会科目は甘くありません。

じゃあ他に何があるのだと思うかもしれません。
その辺りのことを「定期テストならどうか」「高校入試ならどうか」「ハイレベル高校の入試ならどうか」具体的に書いてみます。

これから勉強する時にどの辺りまで深く考えないといけないかを判断する特に、大いに役に立ちます。

 

徳政令という言葉を知っていますか?
代表的なのが「永仁の徳政令」です。これと似たようなものに「相対済まし令」「棄捐令」というのがあります。

これらは、何が同じで何が異なっているのでしょうか。
このように「類似のものの差異を考える」のは。社会を理解する上で極めて役に立ちます

2,定期テストに必要なレベル

まず言葉を知っていなければなりません。これは当然です。

そのため みんなテスト範囲の言葉を懸命に暗記します。
多くの人は「何となく内容を知っている」ぐらいで、すぐに暗記に入ります。

全く得点できない人は、「それって何?」と質問された時、「いや、わからん!」となります。何のことか全くわからないけれど、言葉だけは覚えようとしています。

これでは覚えるのが辛いでしょうね。覚えても得点できません。

定期テストなら範囲も決まっているので、おおよその内容を知っていれば正解することができます。
徳政令も相対済し令も棄捐令も「借金チャラ!」になるという程度の理解で得点できます。

3,高校入試に必要なレベル

いつの時代のものかが、尋ねられます。

「永仁の徳政令」なら鎌倉時代、「相対済し令」なら享保の改革「棄捐令」なら寛政の改革です。偏差値が60までなら、この辺りでまずまず合格でしょう。

もう少しレベルが高くなると それぞれの内容まで知っておかねば判断できない問題が出てきます。

例えば
「永仁の徳政令がなぜ出されたのか」
「徳政令を出した結果どうなったか」です。

またもう少し深くなると、
「他の徳政令は一般庶民も借金チャラになったけれども、永仁の徳政令は御家人が対象になった」というところまで押さえておきたいですね。

これらは、なぜ永仁の徳政令が出されたのかを理解していれば、納得いくことです。

2、「相対済し令」と「徳政令」とはどう違うのでしょうか。

社会科で「理解する」というのはどういうことか、具体例を出して書いてみます

相対済し令は「私人間のトラブル(一応、金銭トラブルと思ってください)は裁判所は受け付けません。自分たちで勝手に解決しなさい」というものです。幕府は「俺は知らんからね」「俺、関係してないからね。俺に文句言うなよ」と言ってるようなものです。

要するに「逃げの一手!」ですよね。借金チャラにするって言ったら、お金を貸した方は幕府に文句言ってくるでしょうね。でも「チャラにはしてないよ。借金回収したかったら自分で努力してやればいいじゃん」「回収できへんのは、お前が回収の努力をしないからやんか」というわけです。「幕府は何も傷がつかない」と幕府の役人は考えたわけです。

「徳政令と相対済し令の違い」は分かると思います。徳政令は「借金なし」になるけど、相対済まし令では「借金は消えない」のです。ただ回収しにくくなるだけです。

2,相対済し令について、もう少し深堀してみます。

(1)実はこれには、幕府の方にもそれなりの言い分があるのです。

幕府が行っていた裁判は、本来 殺人とか窃盗とかのような 刑事事件が対象だったのです。
ところが、「あいつ 金を借りといて 返さない」「代金を払ってくれない」というトラブルもちょこちょこ出てくる。

それで、「しょうがないなぁ・・・。どれ、言い分を言ってごらん」みたいな感じで、「サービスとして」裁判してやってたのです。あくまでも「サービス」です。

ところが経済が発展してくると、当然 お金のトラブルは激増します。それが大量に裁判所に持ち込まれます。
担当役人の人数は少ないので、とても事件をさばききれません。
幕府は「何とかせんとあかん」と頭を抱えていたのです。

(2)一方で旗本は、安い給料で幕府に仕えていました。

世の中には欲しいものがあふれています。旗本は給料が安いです。カツカツの生活をしています。

それでも、「武士たるもの、商売なんかするものではない。金儲けなんかに走るな!」と頭の中に刷り込まれています。
だから、自分で商売することもできません。「ひたすら我慢!」です。

我慢しても給料が増えるわけでもなく、仕方なく借金します。それが積み重なって、とても返せる額ではなくなります。

そこで旗本は親分(つまり幕府)に、「何とかしてくれないかな」なんて気持ちになります。
親分にしても、「給料を上げてやりたいけど、俺も金ないし」です。状況は永仁の徳政令に似てますね。

(3)そこでハタ!と思いついたのが「そうだ、裁判を受け付けない」って言えばいいやんか、です。

そこで、「裁判所に持ってきても、受け付けないからね」と言えば良いと、幕府は思いついたわけです。
これなら、旗本は喜ぶだろう。

幕府は、でもそうは言っても、札差あたりから結構憎まれそうやなと思ったんでしょうね。
「旗本は自主的に借金を返せよ。あくどいことして借金を踏み倒そうなんて考えたらあかんよ」と言っています。

でも、そんなこと言っても無駄ですよね。
今夜にでも夜逃げしようかと思ってるやつがいたとしましょう。そんな奴に、「借金踏み倒してもいいけど、頑張って借金を返してね」と言ってるようなもんです。

借金を踏み倒された金貸しは、あんな旗本に二度と貸してやるかと思います。
結局、旗本は数ヶ月後には、さらに苦しむことになります。

また経済関係もトラブル続発となります。

その結果、なし崩し的に相対済し令は消えていきました。
この辺りまで理解していれば、ハイレベル高校の入試にも十分対応できます

3,棄捐令

1,寛政の改革の時に出されています。

正確には、天保の改革の時にも出されています。計3日出されています。
高校入試では「寛政の改革の時に棄捐令が出された」と覚えておいてください。

内容は「借金チャラ」です。
「裁判は受け付けませんよ」ではなく、「債権債務なし」です。
だから金貸しが請求に行くこともできません。
旗本の屋敷の前まで行って「このクソ旗本!金返せや、コラ-!」ということもできないのです。

旗本は武士としてのプライドがあるので、玄関先で金返せと言われるのは、嫌だったでしょうね。
棄捐令ではそうされる事もなくなりました。

2,なぜ棄捐令を出したのか

旗本はずっと江戸に住んでいます。だから幕府からもらう給料だけで生活しないといけません。
それに加えて、江戸は物価が高い。仕方ないので、米の仲介業者である「札差(ふださし)」からお金を借りて生活していました。札差は米を担保にして高利貸しをしていたんですね。

旗本はお金を借りても返せないし、借金は膨らむばかり。だんだん旗本は札差に頭が上がらなくなってくる。
武士が町人に頭を下げている図なんて、身分制度を絶対の制度としている幕府にとって無視できない。

そういうわけで、「旗本の借金はチャラね!」という法律を出してきたわけです。

徳政令は一般庶民も対象にしていたのですが、棄捐令は旗本を対象にしています。(永仁の徳政令だけは御家人武士を対象にしています)相対済し令も一般庶民を対象にしていますが、主な狙いは旗本救済です。
この棄捐令も徳政令も相対済し令と同じように、結局は旗本を一層苦しい状況に追い込んでしまいました。

3,まとめ

定期テスト対策なら、表面的なことだけ知っていれば十分です。
入試問題に合格するには、他の事柄との関連を知っておく必要があります。
ハイレベルな高校に合格するには、もっと深く理解しなければなりません。

「なぜ?」という問題意識を持って、自分で調べる必要があります
全ての事柄についてここまで追求するのは無理でしょう。しかし、「これとあれは似てるなあ」と思ったら調べてみるといいですね。

それともう一つ、教科書の索引を見てください。
その言葉が色々なページに出てくる場合には、その言葉は非常に重要です。
各ページを丁寧に読んで、その言葉がどのような使われ方をしているのか、よく考えてください。

このような勉強の仕方は、時間がかかりそうに見えますが問題なく実力がつきます。
定期テストの点数だけを考えていると、「なぜ?」と考えたりはしなくなります。

 

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